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入社前研修費用と所得拡大促進税制

2022/05/16

[相談]

会計事務所に勤務する者です。

担当している法人(3月決算法人)が、今年(令和4年)4月の入社予定者に対して、令和4年3月に入社前研修(業務に関する基礎的な内容習得のための研修)を実施しました。

その法人の令和4年3月期決算では、令和3年4月1日以降開始の事業年度から変更された、中小企業者等における所得拡大促進税制を適用する予定です。

そこでお聞きしたいのですが、上記の入社前研修費用は、同税制の上乗せ措置の適用要件である教育訓練費増加要件の対象となる費用に含まれるのでしょうか。

なお、その入社前研修参加者に対する給与等の支払はありません。

[回答]

ご相談の入社前研修費用は、上乗せ措置の対象となる教育訓練費には含まれません。

[解説]

1.中小企業者等における所得拡大促進税制の概要

所得拡大促進税制とは、青色申告法人が、平成30年(2018年)4月1日から令和5年(2023年)3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、適用対象年度の給与等支給額や継続雇用者給与等支給額などに基づく一定の要件を満たす場合には、法人税額の特別控除が認められるという制度です。

この制度については、令和3年度税制改正により、令和3年4月1日以降に開始される事業年度からは、適用要件が、雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加という要件に一本化されています。

2.上乗せ措置の概要

上記1.の所得拡大促進税制では、その事業年度において一定の要件(下記参照)を満たす場合、通常は控除対象雇用者給与等支給額の15%とされている税額控除額を、25%とする上乗せ措置が設けられています。

上乗せ措置の要件)

(1)その中小企業者等の雇用者給与等支給額からその比較雇用者給与等支給額を控除した金額のその比較雇用者給与等支給額に対する割合が2.5%以上であること

(2)次に掲げる要件のいずれかを満たすこと

①その中小企業者等のその事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額からその比較教育訓練費の額を控除した金額のその比較教育訓練費の額に対する割合が10%以上であること

②その中小企業者等が、その事業年度終了の日までにおいて中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていること

3.教育訓練の対象者

上記の上乗せ措置の要件(2)①の教育訓練費増加要件における教育訓練の対象者は、法人の使用人のうち、その法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者で、その国内に所在する事業所につき作成された労働基準法に規定する賃金台帳に記載された者とすると定められています。

したがって、入社予定者は上記の教育訓練の対象者には含まれないことから、入社予定者に対して実施した入社前研修費用も、上乗せ措置の対象となる教育訓練費には含まれないこととなります。

[参考]

措法42の12の5、措令27の12の5、経済産業省・中小企業庁「中小企業向け所得拡大促進税制ご利用ガイドブック-令和3年4月1日以降開始の事業年度用-(個人事業主は令和4年分以降用)」(令和4年2月10日公表版)など

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