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持分なし医療法人の交際費等損金不算入額の計算

2021/03/01

[相談]

 会計事務所に勤務する者です。
 私は、持分なし医療法人を担当しているのですが、その法人の確定した決算における貸借対照表の純資産の部の合計額から当期利益を控除した金額が2億円となっています。

 このような場合、法人税法上の交際費等の損金不算入額の計算について、800万円の定額控除限度額の規定の適用を受けることはできるのでしょうか。

[回答]

 ご相談の持分なし医療法人については、定額控除限度額の規定の適用を受けることはできません。

[解説]

1.交際費等の損金不算入制度の概要

 法人税法上、法人が令和4年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額については、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないものと定められています。

 ただし、その事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が100億円以下である法人については、その交際費等の額のうち接待飲食費の額の50%に相当する金額を超える部分の金額について、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないものと定められています。

 また、法人のうち、その事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるものについては、原則として、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれに定める金額をもって、交際費等の損金不算入額とすることが認められています。

①交際費等の額が定額控除限度額(800万円にその事業年度の月数を乗じてこれを12で除して計算した金額)以下である場合…0円
②交際費等の額が定額控除限度額を超える場合…その超える部分の金額

2. 持分なし医療法人の交際費等の損金不算入額

 上記1.について、持分なし医療法人のような資本又は出資を有しない法人については、法人税法上の交際費等の損金不算入額について別段の定めが設けられています。

 具体的には、その事業年度終了の日における確定決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から、その貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額(その貸借対照表に、その事業年度に係る利益の額が計上されているときは、その額を控除した金額とし、その事業年度に係る欠損金の額が計上されているときは、その額を加算した金額とする。)の60%に相当する金額を、上記1.の「資本金の額又は出資金の額」と同様に考え、その金額によって、交際費等の損金不算入額が決まることとなります。

 このため、今回のご相談の持分なし医療法人のように、貸借対照表の純資産の部の合計額から当期利益を控除した金額の60%相当額が1億円を超えているような場合には、上記1.の定額控除限度額の規定を適用することは認められないこととなります。

 持分なし医療法人制度が始まって10年以上が経過し、今回のご相談のような事例に該当する医療法人が増えてきているのではないかと推測されます。このため、持分なし医療法人における法人税法上の交際費等の損金不算入額の計算を行う場合には、これまで以上に十分な注意を払う必要があるのではないかと思われます。

[参考]

措法61の4、措令37の4など

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