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令和3年3月31日で終了した、貸付事業用宅地等の経過措置
2021/04/15
[相談]
令和3年3月31日をもって、相続税法上の小規模宅地等の特例における貸付事業用宅地等の経過措置が終了したと聞きました。その終了した経過措置の概要を教えてください。
[回答]
ご相談の経過措置は、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間に相続等により取得した宅地等のうち、平成30年3月31日までに貸付事業の用に供された宅地等については、3年以内貸付宅地等に該当しないものとするものです。詳細は下記解説をご参照ください。
[解説]
1.小規模宅地等の特例の概要
相続税法上の小規模宅地等の特例(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)とは、
個人が相続等により取得した財産のうちに、
その相続の開始の直前において、
その相続もしくは遺贈に係る被相続人又はその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(被相続人等)の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で建物又は構築物の敷地の用に供されているもの(特例対象宅地等)がある場合には、
その相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、
その個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部でこの特例の適用を受けるものとして選択をしたもの(選択特例対象宅地等)については、
限度面積要件を満たす場合のその選択特例対象宅地等(小規模宅地等)に限り、
相続税の課税価格に算入すべき価額は、
通常の方法によって評価した価額に小規模宅地等の区分に応じた一定の割合を乗じて計算した金額とする
という制度です。
2.貸付事業用宅地等の概要
上記1.の特例対象宅地等にはいくつかの種類がありますが、そのうち「貸付事業用宅地等」とは、被相続人等の事業(貸付事業)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たすその被相続人の親族が相続等により取得したものをいうものと定められています。
(要件)
①その親族が、相続開始時から申告期限までの間にその宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その貸付事業の用に供していること。
②その被相続人の親族がその被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供していること。
ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(3年以内貸付宅地等)は、貸付事業用宅地等から除かれることと定められています。
この制限は、相続開始前に貸付用不動産を購入することにより金融資産を不動産に変換することで、金融資産で保有する場合に比し相続税評価額が圧縮され、かつ、小規模宅地等の特例も適用できるという節税策が雑誌などで盛んに紹介されたこと等の理由から、平成30年度税制改正により設けられたものです。
その一方で、激変緩和措置として、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間に相続等により取得した宅地等のうち、平成30年3月31日までに貸付事業の用に供された宅地等については、3年以内貸付宅地等に該当しないものとする経過措置が設けられていました。
今般、その経過措置が令和3年3月31日をもって終了したことから、相続等が令和3年4月1日以後に生じた場合には、3年以内貸付宅地等については貸付事業用宅地等から除かれるため、原則として、小規模宅地等の特例が適用できないこととなります。
[参考]
措法69の4、措令40の2、措規23の2、財務省「平成30年度税制改正の開設 租税特別措置法(相続税・贈与税関係)の改正」など
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