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相続財産の寄附と相続税の取扱い

2022/07/01

Q.今月のご相談

父の相続財産の一部を寄附しようと思います。

寄附先は、父が生前お世話になっていた有料老人ホームを経営している社会福祉法人です。実は生前、父から「自分が亡くなった後にA銀行の定期預金を寄附してほしい」と口頭で伝えられていました。ただし、遺言書などはありません。

実際に寄附を行った場合、相続税は軽減されるのでしょうか?

A-1.ワンポイントアドバイス

ご相談のケースで寄附を行う場合、一定の条件を満たせば、寄附の対象となるA銀行の定期預金について相続税の計算から外すことができ、相続税が軽減されます。

A-2.詳細解説

1.相続人の意思による寄附

自分が亡くなったら財産を寄附する、という場合には「どこ(誰)へ、何を(いくら)寄附する」という意思表示を、正式な遺言書という形で遺す必要があります。今回のご相談のケースでは、お父様の遺言書はないとのことですから、お父様の遺志で寄附することはできません。このような場合には、一度相続の手続を行って相続した後、相続人から寄附をする、という手続になります。例えご本人が生前に「寄附したい」と周囲の方に伝えていても、相続人にその意思がなければ寄附は実行されません。

2.相続税の取扱い

相続財産を寄附した場合に以下の要件をすべて満たすと、寄附した財産について相続税の対象としない特例があります。

①寄附した財産が、相続や遺贈によって取得した財産であること (相続財産を換金した後の現金を寄附した場合などは、対象となりません。)

②相続税の申告期限までに、相続した財産を寄附すること (相続日から10ヶ月後の応答日までに寄附をしなければなりません。)

③寄附先が、国、地方公共団体、その他教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益法人であること (特定の公益法人の範囲は、独立行政法人や社会福祉法人などに限定されており、寄附時点ですでに設立されている必要があります。該当するか否かは事前に寄附予定先へお問合せください。)

ご相談のケースにおいて、上記要件をすべて満たすと、寄附をした相続財産(A銀行の定期預金)を相続税の対象から外すことができます。

3.その他の留意点

ご相談のケースの場合は、相続人からの寄附となるため、寄附をした相続人の所得税の計算上、寄附金控除または税額控除の適用を受けられるかどうか検討しましょう。適用については、寄附先である社会福祉法人が適用できる対象先でなければなりません。この点についても、事前に寄附先の社会福祉法人へお問合せいただくとよいでしょう。

なお、上記2.や3.の適用をする場合には、申告時の手続が必要となります。

[参考]

国税庁HP

「No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき」

「No.1266 公益社団法人等に寄附をしたとき」

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