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相続分割がまとまらない場合、相続税の申告や納税への影響は?

2021/03/01

[相談]

 父が亡くなって3ヶ月が経ちました。父の遺産について相続人間で意見が分かれ、すぐの分割は見込めそうにありません。このまま分割をしなかったとき、相続税の申告や納税にどのような影響がありますか?

[回答]

 相続税の申告及び納税には期限が定められており、遺産分割がまとまらなくても、それを理由に期限を延長することはできません。また、遺産分割協議により取得者が決まっていなければ、相続税の軽減の特例や納税の特例を適用することはできません。この点にもご注意ください。

[詳細解説]

1.相続税の申告・納付期限

 相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)から10ヶ月以内です。また、申告期限=納期限ですので、相続税の納付も10ヶ月以内にしなければなりません。災害その他やむを得ない事情があり、10ヶ月以内に申告及び納税ができない場合で、税務署長が許可したときは、その期限を延長することができますが、「遺産分割協議が調わない」という理由は、災害その他やむを得ない事情に該当せず、申告期限は延長できません。したがって、いくら遺産分割協議が調っていなくても、10ヶ月の期限内に、相続税の申告書の提出及び相続税の納税を行わなければなりません。

 この場合、遺産分割協議が調っていないことにより、各相続人が民法に規定する法定相続分で財産を相続したものとして、相続税の申告及び納税を行うこととなります。

 申告期限においてお父様の遺産を一銭も相続していなくても、ご自分の法定相続分に相当する財産に対する相続税は納めなければなりません。そして、その相続税を期限までに納められない場合には、国から「延滞税」という利息を請求されます。

2.遺産分割協議が調わないと受けられない特例

 相続税法においては、税の軽減の特例や納税の特例がいくつか設けられています。いずれの特例も遺産分割協議においてその取得者が決まっていない場合には、適用を受けることができません。

 つまり、遺産分割協議の不調は、納期限までの納税資金準備を困難にするだけでなく、特例を受けることができないため、納付税額も多額になります。まさに悪循環です。

 遺産分割協議には法的な期限はありませんが、相続税が課税される可能性のある方は、10ヶ月という期限を意識して手続きを進めましょう。

 将来の相続時に遺産分割協議が調わないと予想される場合には、遺言書を作成しておくことにより、このような事態を避けることができます。遺されるご家族のために、生前からできる対策を講じておくことも大切でしょう。

参考:取得者が決まっている場合のみ適用を受けることができる特例の一部

① 配偶者の税額軽減
 配偶者が相続した財産のうち、配偶者の法定相続分又は1億6千万円とのいずれか多い金額まで相続税が減額されます。

② 小規模宅地の評価減
 被相続人の事業用及び居住用の宅地等を、一定の要件を満たした相続人が相続した場合には、一定の面積を限度としてその宅地等の評価額が50%又は80%減額されます。

③ 物納
 相続税の納付につき金銭で納付することが困難で、延納でも困難である場合、不動産等の財産で納付することができます。ただし遺産分割が調っていない財産については、管理処分が適当でない財産となり、認められません。

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