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配偶者の税額軽減と留意点

2021/08/02

Q.今月のご相談

 父が他界しました。相続人は母と私たち兄弟2人の合計3人です。配偶者が相続した財産については相続税がかからない、と聞いたことがあります。

 父の遺産は約1億円ですが、1億円すべてを母が相続する場合には、相続税は払わなくてもよいですか?

 また、今回母がすべて相続し相続税を払わなくてもよいのなら、とても有利に思えるのですが、問題はありませんか?

A-1.ワンポイントアドバイス

 「配偶者の税額軽減」を適用することで、お父様の相続に関してお母様に相続税はかかりません。主な留意点として、適用するには相続税の申告を行うこと、遺産分割していないと適用できないこと、次のお母様の相続時の相続税負担を考慮に入れることが考えられます。

A-2.詳細解説

1.配偶者の税額軽減

 被相続人の配偶者は相続しても、一定の金額まで相続税がかかりません。このことを「配偶者の税額軽減」といいます。

【配偶者の税額軽減】
 配偶者が相続や遺贈により取得した財産のうち、次のうちいずれか多い金額まで、配偶者に相続税はかかりません。
  1. 1億6,000万円
  2. 配偶者の法定相続分相当額

2.留意点

 この「配偶者の税額軽減」を適用する場合に留意すべき点は、主に次の3つが挙げられます。

(1)適用するには相続税の申告を行うこと

 「配偶者の税額軽減」を適用するには、相続税の申告書を提出しなければなりません。仮に最終的な相続税の納付額が「0」円になっても、申告書の提出は必要です。

 また、申告書の提出時には一定の書類の添付が必要となりますので、ご注意ください。

(2)遺産分割をしていないと適用できないこと

 「配偶者の税額軽減」は、実際に取得した財産を基に計算することとなっているため、(1)の申告を行う際に未分割の部分については、「配偶者の税額軽減」の適用はできません。

この場合に、相続税の申告書等に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、その申告期限から3年以内に遺産分割をしたときは、更正の請求の手続きを経ることで、その遺産分割により配偶者が取得した財産について「配偶者の税額軽減」を適用することができます。

(3)次のお母様の相続時の相続税負担を考慮に入れること

 配偶者の税額軽減は、残された配偶者の生活保障のため、配偶者が相続した財産のうち一定額まで相続税を課税しない、という趣旨の制度です。また一方で、同一世代間での財産の移転であるため、近いうちにもう一度相続税を課税する機会がある、という側面もあります。

 そのため、次のお母様の相続(いわゆる「二次相続」)時の相続税まで考えて、お父様の相続(いわゆる「一次相続」)を考える必要があります。

 一次相続での配偶者の相続割合を決定する場合には、目の前にある税負担を軽減させることにとらわれがちですが、将来の二次相続を見据えた税負担まで考えることで、財産の承継にかかる税負担を最小限に抑えることが可能です。配偶者の年齢、健康状態、今後の生活基盤、相続対策に対する考え方など、様々な角度からの検討が重要でしょう。

参考

 相法19の2、32、相規1の6、16、国税庁HPタックスアンサー「No.4158 配偶者の税額の軽減」など

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